ワイヤーカットとは?
ワイヤーカット(正式にはワイヤー放電加工)は、電流を流した真鍮などのワイヤーで加工物を溶融しながら切断する方法です。主に真鍮製のワイヤーが使われますが、タングステンやモリブデン製のものもあります。この加工機はワイヤー放電加工機と呼ばれ、導電性のある材料に高精度で加工が可能です。金型部品や家電製品、輸送機部品などの製造に利用されています。
ワイヤーカットのメリット
導電性のある材料であれば、厚みや硬度に関係なく加工可能
ワイヤーカットは、6000~7000度の高温で加工物を溶融しながら切断する方法です。導電性があればどんな金属材料でも加工可能で、鋼板、ステンレス、銅、アルミ、超硬、インコネル、ハステロイ、多結晶ダイヤモンドなど様々な材料に対応できます。さらに、薄板から200mm以上の厚みまで、材料の硬さに関係なく加工できるのが大きなメリットです。
極薄板の加工が可能
ワイヤーカットは、板厚0.01~0.05mmの極薄板でも切断可能です。レーザー加工機やタレットパンチでは難しいこのような薄板の加工に、ワイヤーカットのメリットがあります。
高精度加工が可能
ワイヤーカットは、ワイヤー電極線と工作物が非接触で、φ0.05~0.3mmの細さのワイヤーを使用してミクロンレベルの高精度加工が可能です。レーザーカットよりも高精度で、研削加工のような0.005mmの精度を実現します。そのため、順送金型部品やリング、ギアの半割加工などに利用されています。
加工物への負荷が少ない
ワイヤーカットは、放電を利用した非接触加工のため、加工物への負荷が少ないのが3つ目のメリットです。接触加工では残留応力や熱変形が生じますが、ワイヤーカットではそれらが抑えられます。加工液中で行うため、熱変形も微小です。
バリが生じない
ワイヤーカットは、接触加工で発生しがちなバリが生じません。そのため、バリ取り作業が不要となり、精密部品の加工でコストダウンが可能です。
複雑形状の加工が可能
ワイヤーカットは、直線だけでなく円弧などの曲線形状や複雑な平面形状の加工が可能です。さらに、上下のワイヤーを別々に動かすことで、テーパー形状の加工も対応できます。
工具が不要
切削・研削加工のような接触加工では、刃物を用いた機械的加工によって加工物を加工します。しかし、ワイヤーカットでは、そのような工具は不要です。代わりに真鍮製の極細ワイヤー線のみで全て加工することができます。そのため、工具取替工程の短縮にもつながります。
材料ロスが少ない
切削加工では、加工物の取り代が多く、切りくずも多く発生してしまい、その分が材料ロスとなってしまいます。しかしワイヤーカットでは、加工物を工作機械に固定するための掴み代分を確保さえしてしまえば、加工幅も小さく済むため、他の加工方法より材料ロスを少なく、無駄なく材料を利用することができます。
無人運転・夜間運転が可能
ワイヤーカットは、NCプログラムによって夜間の無人運転もすることができます。そのため、加工中は他の作業に時間を当てることができます。
低コストで加工が可能
ワイヤーカットでは、主に安価な真鍮製のワイヤー電極線を使用します。これにより、高価な刃物工具を使う切削や研削と比べて消耗品のコストが削減されます。さらに、材料ロスが少なく、材料費も節約できます。また、工具交換が少なく、交換時間の短縮でコストダウンが図れます。特に薄板は複数枚重ねて加工できるため、加工時間の大幅な削減が可能です。
ワイヤーカットのデメリット
加工速度が遅く、量産に不向き
ワイヤーカットは、工作物とワイヤー線が約数十ミクロンの距離を保ち、数μsの間隔で連続放電加工しますが、加工速度が非常に遅いのがデメリットです。ワイヤー線の水平送り速度は1分あたり数mm程度で、肉眼で加工の進行がわからないほどです。材料の導電率や厚さにより加工時間が数時間から数日かかる場合もあり、量産には不向きです。
導電しない材料は加工できない
またワイヤーカットは放電加工の一種であるため、導電性のある素材では硬さや厚さに関係なく加工することができます。しかし、通電しない絶縁材料は加工することができません。
底部分の加工ができない
ワイヤーカットは、ワイヤー電極線による糸鋸のような加工のため、平面の切断・切り抜き加工はできますが、底がある形状は加工することができません。底のある形状を放電加工で加工したい場合は、型彫放電加工を使用する必要があります。
水平方向の加工ができない
ワイヤーカットはワイヤー電極線が上から下へという垂直方向に張られています。そのため、水平方向に加工物を切断することはできません。ただし、ある程度の角度を設けたテーパー加工であれば対応可能です。
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