樹脂加工の基本!射出成形について
プラスチックともよばれる樹脂製品は、軽く、丈夫で大量生産がしやすいことから、日用品や電子機器、機械のカバーなど、幅広い分野で使われています。
射出成形とは
プラスチック製品を作ることを「樹脂加工」といいます。樹脂加工では、熱を加えると柔らかくなる熱可塑性樹脂が使用されます。ペレット状の材料樹脂を温めて溶かし、金属で作った型(金型)の中に流し込みます。しかし、溶けた樹脂は水などと違ってかなり粘りが強く、ドロっとしているため、注射器のような装置で力をかけながら流し込まなければなりません。このため、樹脂の加工は「射出成形」と呼ばれています。
射出成形では作れない形状
1. 薄肉形状
薄すぎる形状は、粘りの強い樹脂が金型の中に入り込むことができなくなるため、作れません。樹脂の種類や形状にもよりますが、厚さ1mm以下になると注意が必要です。
2. 垂直な壁
射出成形では、出来上がった部品を金型から取り外すために「抜き勾配」が必要です。そのため、一見垂直に見える壁でも、根元に向かって少しずつ太くなる勾配形状になっています。抜き勾配を考慮しない垂直な形状は作れません。
3. アンダーカット
金型は上下に開くため、金型の動きを妨げる形状は作れません。たとえば、立壁の内側にある突起や、側面に開いた穴などがこれに該当します。このような形状はアンダーカット、通称「アンダー」とよばれ、そのままでは作れません。
4. 隅Rのない尖った形状
樹脂成型に使う金型は、金属の塊を機械加工で彫り、そこにさまざまな金型部品を追加して作製します。金属を彫る工具は全て角に丸みがあり、面と面がぴったりと合わさった直角を作ることはできません。そのため、射出成形でも隅Rのない尖った形状は作れません。また、樹脂の流れの観点からも尖った形状は推奨されていません。
特徴とメリット
材料の選択
射出成形に使用される樹脂には、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)など、多くの種類があります。それぞれの樹脂は特定の特性を持っており、製品の用途や要求される性能に応じて適切な材料を選ぶことが重要です。
金型の設計
射出成形では、金型の設計が非常に重要です。金型の設計には、冷却システム、ゲートの位置、エジェクターピンの配置など、多くの要素が関与します。これらの要素は、製品の品質や生産効率に大きな影響を与えます。
メリット
生産コストを抑えられる
射出成形は、初期の金型製作コストが高い一方で、大量生産に適しているため、1個あたりのコストは低く抑えることができます。このため、大量生産が見込まれる製品に適した製造方法です。
サイクルタイム
射出成形の生産サイクルタイムは、材料の種類や製品の形状、金型の設計により異なります。サイクルタイムを短縮するためには、最適な冷却システムや効率的な樹脂流動解析が必要です。
品質管理
射出成形製品の品質を確保するためには、成形条件(温度、圧力、冷却時間など)の厳密な管理が必要です。また、製品の外観や寸法をチェックする品質検査も重要です。
環境への配慮
射出成形に使用される樹脂は、リサイクル可能なものが多く、環境に配慮した生産が可能です。また、生産過程で発生する廃棄物を最小限に抑えることが求められます。