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板金加工における塗装の種類と注意点

板金加工における塗装の種類と注意点

板金加工における塗装には、用途や求められる耐久性、美観などに応じてさまざまな種類があります。以下に代表的な塗装方法を紹介します。


1. 焼付塗装(粉体塗装・溶剤塗装)

高温で焼き付けることで、塗膜の強度と耐久性を向上させる塗装方法。

(1) 粉体塗装(パウダーコーティング)

  • 特徴:粉末状の塗料を静電気で吸着させ、加熱して焼き付ける。
  • メリット
    • 耐久性・耐食性が高い(屋外・工業製品向け)。
    • 環境負荷が少ない(溶剤を使わない)。
  • デメリット
    • 厚膜になりやすく、細かい塗装には不向き
    • 塗装後の修正が難しい
  • 用途:自動車部品、家電製品、建築資材

(2) 溶剤焼付塗装(ウレタン・アクリル・メラミン)

  • 特徴:溶剤系塗料を塗布し、加熱して硬化させる。
  • メリット
    • 仕上がりが美しい(粉体塗装よりも滑らか)。
    • カラーバリエーションが豊富
  • デメリット
    • 有機溶剤を使用するため、環境対策が必要
  • 用途:精密機器、電化製品、自動車パーツ

2. 静電塗装(液体塗装)

静電気を利用して塗料を板金表面に均一に付着させる方法。

  • メリット
    • 均一な塗膜を形成できる。
    • 薄膜で滑らかな仕上がり
  • デメリット
    • 設備が必要でコストがかかる
  • 用途:家電製品、金属製家具、自動車

3. ウレタン塗装

ウレタン樹脂を使用した塗装方法で、耐久性・耐薬品性・耐候性が高い

  • メリット
    • 屋外使用でも劣化しにくい
    • 弾力性があり、割れにくい
  • デメリット
    • 乾燥に時間がかかる(硬化剤を混ぜる2液型もある)。
  • 用途:自動車、バイク部品、看板

4. アクリル塗装

アクリル樹脂を使った塗装方法で、鮮やかな発色と光沢が特徴。

  • メリット
    • 見た目が美しく、カラーバリエーションが豊富
    • 乾燥が速い
  • デメリット
    • 耐久性はウレタン塗装より低い
  • 用途:家電製品、屋内什器

5. フッ素塗装

フッ素樹脂を使用し、耐候性・耐薬品性・耐摩耗性に優れる。

  • メリット
    • 超耐久性・防汚性が高い
    • 雨や紫外線に強く、長期間劣化しにくい
  • デメリット
    • コストが高い
  • 用途:航空機部品、橋梁、屋外建材

6. 電着塗装(カチオン塗装)

水性塗料を電気の力で板金表面に密着させる方法。

  • メリット
    • 防錆性能が高い(鉄板の下地処理に最適)。
    • 均一に塗装できる(複雑形状にも対応)。
  • デメリット
    • カラーの選択肢が限られる(黒やグレーが主流)。
  • 用途:自動車のボディ・フレーム、家電製品

7. ラッカー塗装

速乾性のある塗料を使用する簡易的な塗装方法。

  • メリット
    • 手軽で乾燥が速い
    • 修正や再塗装が容易
  • デメリット
    • 耐久性・耐候性が低い
  • 用途:模型、DIY、短期使用の金属製品

8. 特殊塗装

  • メッキ調塗装:クロムメッキのような光沢を出せる塗装。
  • テフロン塗装:耐熱・耐摩耗性を向上させる。
  • 蓄光・蛍光塗装:暗闇で光る機能を付加。
  • 導電塗装:静電気を防ぐための特殊塗装(電子機器用)。

まとめ

塗装方法 特徴 主な用途
粉体塗装 耐久性・環境対応 自動車部品、建築資材
溶剤焼付塗装 美観・耐久性 家電、精密機器
静電塗装 均一な仕上がり 家電、家具
ウレタン塗装 耐久性・弾力性 車両部品、屋外設備
アクリル塗装 発色・光沢 屋内什器
フッ素塗装 耐候性・耐薬品性 航空機、橋梁
電着塗装 防錆・均一塗装 自動車ボディ
ラッカー塗装 速乾・手軽 DIY、模型

塗装を選ぶ際は、耐久性・コスト・環境対策・用途を考慮することが重要です。

板金加工における塗装では、仕上がりの品質や耐久性を確保するために、いくつかの重要な注意点があります。以下に、塗装の工程ごとに注意すべきポイントをまとめました。


1. 前処理の重要性

塗装の密着性や仕上がりを向上させるために、塗装前の処理が非常に重要です。

(1) 脱脂・洗浄

  • 油分や汚れが残っていると、塗膜が剥がれやすくなる。
  • アルカリ洗浄や有機溶剤を用いた脱脂処理を行う。

(2) 研磨・バリ取り

  • 板金加工後のバリや傷を除去し、塗装面を滑らかにする。
  • サンドペーパーやバフ研磨を使用。

(3) 化成処理(リン酸処理・クロメート処理)

  • 防錆効果を高め、塗装の密着性を向上させるために実施。
  • 鉄系素材:リン酸亜鉛処理
  • アルミ・ステンレス:クロメート処理

2. 塗装工程の注意点

(1) 塗装環境の管理

  • ホコリ・ゴミ・湿気は塗装不良の原因になる。
  • 塗装ブース内の温度・湿度を一定に保つ。

(2) 塗装の厚み管理

  • 塗装が厚すぎると
    • 乾燥時間が長くなり、塗膜の割れや剥がれが発生。
  • 塗装が薄すぎると
    • 防錆効果や耐久性が低下し、長期間の使用に耐えられない。
  • 推奨塗膜厚を守る(一般的には40~100μm)。

(3) 塗料の選定と希釈

  • 材質や用途に適した塗料を選ぶ(粉体塗装・溶剤塗装・ウレタン塗装など)。
  • 希釈率が適切でないと、ムラ・タレ・気泡が発生する。

(4) 静電塗装の場合の注意点

  • 板金のアース接続を確実にすることで、静電気の効果を最大化。
  • 形状によって塗料の付き方が異なるため、回転・調整しながら塗装

3. 乾燥・焼付工程の管理

(1) 乾燥温度と時間

  • 低温すぎると硬化不良、高温すぎると変色や歪みが発生する。
  • 推奨温度・時間を守る(例:焼付塗装は150~200℃で30分程度)。

(2) 塗装間隔の管理

  • 二度塗り・三度塗りをする場合、適切な乾燥時間を確保する。
  • 乾燥が不十分な状態で重ね塗りすると、塗膜の膨れ・剥がれが発生。

4. 塗装欠陥の防止策

欠陥 原因 対策
ピンホール(小さな穴) 油分・水分・塗料の気泡 塗装前の脱脂・乾燥を徹底、適切な塗料の希釈
ムラ・ダレ 塗装の厚み不均一 均一なスプレー塗布、適切な希釈・塗装距離
塗膜剥がれ 前処理不足・塗装が薄すぎる 表面処理を徹底、推奨塗膜厚を守る
変色・焼け 乾燥温度が高すぎる 乾燥温度と時間を管理
クレーター(凹み) ホコリや異物の付着 クリーンな塗装環境を維持

5. 塗装後の仕上げと検査

(1) 外観検査

  • 目視検査・照明を当てたチェックで、ムラや異物の混入を確認。
  • 均一な光沢が出ているかを確認。

(2) 塗膜厚測定

  • **膜厚計(マイクロメーター・超音波測定器)**を使用して、適切な厚みか確認。

(3) 耐久試験(必要に応じて)

  • 耐候性試験(紫外線・温度変化による劣化確認)。
  • 耐塩害試験(塩水噴霧で防錆性能確認)。

6. まとめ

前処理(脱脂・化成処理)をしっかり行う
塗装環境(温度・湿度・ホコリ)を管理する
塗装の厚み・乾燥時間を適切に設定する
塗装不良(ムラ・剥がれ・ピンホール)を防ぐ
仕上げ・検査を徹底し、高品質な塗装を確保する

塗装の品質は、前処理と管理の精度によって大きく左右されます。
特に防錆・耐久性が求められる場合は、適切な工程管理が重要です!

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