切削加工の快削材と難削材について
材料を切ったり削ったりしながら製品を作る切削加工は、材料によって使いやすいものと使いにくいものがあります。材料の選定は製品の「仕様」や「コスト」などで決められる場合が多いですが、切削やプレスといった加工方法にあわせた材料選びも重要です。今回は切削加工の快削材と難削材、設計する際のポイントなどを詳しく紹介します。
切削部品を設計する際のポイント
切削加工とは、その名の通り材料を切ったり削ったりしながら形を作る加工方法です。金属・プラスチック・樹脂など、幅広い材料に使える便利な加工方法としても知られています。旋盤・マシニングセンタ・ボール盤加工などが代表的で、使う材料や用途にあわせて使い分けるのが特徴です。
切削部品にかかるコスト
切削部品の設計をする際は、部品のコストに着目しましょう。コストは材料にかかる費用だけでなく、加工費用・表面処理費用・熱処理費用なども含まれます。いくら材料費が安くても、加工にコストがかかると低コストでは作れません。使う材料にかかるコストを算出する際は、加工後ではなく加工前の重量をチェックする必要があります。加工前の状態をできるだけ完成に近いサイズまで小さくし、加工する量を減らせばコストが下げられます。また、加工費用に関しては複雑な加工ほどコストがアップするのが特徴です。難しい加工や硬い材料の切削は時間もかかってしまうため、それなりの加工費用がかかります。削ったままの状態で使用できない材料に関しては、熱処理や表面処理などの特殊処理を行う必要があり、さらにコストがアップします。
加工依頼時の注意点
・必要以上の硬い材料を使わない
・特殊な治具や加工が必要な形状はできるだけ避ける
・必要以上の加工精度を求めない
材料費に関しては「kgあたりの単価」 が基準となるので、使う材料によって費用が大きく異なります。加工費は「材料の削りやすさ」「部品形状」「寸法精度」によって決められるのが一般的です。例えば、真鍮(しんちゅう)などの柔らかい材料であれば加工コストが安くなります。しかし、ステンレスなど硬い材料では加工に時間を要するのでコストが高くなってしまいます。材料の形状に関しては、ブロックからの削り出しよりも丸棒などの棒材からの削り出しの方がコストが安い傾向です。特殊な道具が必要な場合や特殊加工を要する場合には、コストが一気にアップする可能性があります。
さらに、寸法精度を追及すると加工時間が多くなり高コストになります。そのため、設計者はコストと性能のバランスを考慮しながら、低コストかつ要求される性能を満たす設計をしなければなりません。
切削加工に適した快削材
快削材とはごく微量の添加物やさまざまな工夫、熱処理などによって被削性を向上させた材料を指します。被削性とは切削加工においての削りやすさなどを示し、快削材は簡単にいえば切削加工に向いた材料です。以下では、切削加工に適した材料をコストなどとあわせて紹介します。
どの材料も切削加工に適していますが、特に銅合金は柔らかく削りやすいので加工がしやすいです。また、SUM21は切削性と加工性に優れた鋼材で、加工費用のコストダウンが望めます。
切削加工に向かない難削材
難削材とは削ったり加工したりしにくい材料を指します。放熱性が悪いので削る際に刃先の温度が上がりやすく、粘度があり切屑処理性も悪いので切削加工には向きません。以下では、切削加工に向かない材料をコストなど、併せて紹介します。
難削材は素材そのものが削りにくく切削加工には向かない材料はもちろん、インコネルやハステロイなど被削性が不明な材料も含まれます。新素材の多くはデータが少なく、切削加工に向いているかどうか分からないものが多いです。また、マグネシウムなど燃えやすい素材も切削加工には向きません。難削材を無理に切削しようとすると、思わぬトラブルや危険を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
まとめ
切削部品を設計する際は、どの材料が切削に向いていて、向いていないのかを理解した上で、加工方法にあわせた材料選びをすることが重要になってきます。弊社は旋盤・フライス・マシニング・放電加工機などのあらゆる工作機械を使用して、材料に適した切削加工ができます。近年では機械精度も大幅に上がっており、許容誤差が0.001㎜など精巧な製品の製作も可能です。また、お客様の要望に応じて少数から量産まで幅広く対応できます。
難削材について
難削材とは?
難削材とは、ただ削りにくいだけでなく「取り扱い自体が難しい素材」のことを指します。硬すぎて削りにくい、壊れやすくて扱いにくい、発火・引火しやすいため注意が必要など、さまざまな条件があり、一筋縄ではいかない素材の相称が、難削材です。また、データがそろっておらず、削りやすいかどうかが分からない金属も難削材に含まれます。
代表的な難削材
難削材には大きく分けると下記のような特性があります。
多くの素材が下記の1~2個の特徴を有していますが、中には3個、4個の条件を兼ね備えている、非常に加工が難しい素材もあります。
・硬度が高く削りにくい
・硬脆性があり、加工時に壊れやすい
・加工硬化が生じやすい
・工具と親和性が高く、加工時に溶着しやすい
・高温強度が大きく高温下でも変形しにくい
・熱伝導率が低く、加工時の温度を逃がしにくい
・材料強度が大きく、せん断や引っ張りに強い
・延性が大きく粘り強い性質を持つ
・アブレシブ物質を含んでいる
・加工時に発火、引火する可能性が高い
ステンレス
一般的な知名度の高い「ステンレス」も、実は難削材のひとつです。ステンレスは熱伝導率が低く、切削加工時に発生する熱をため込みやすい性質と、加工硬化性を兼ね備えていて、高温での加工が難しい素材です。さらに、工具との親和性が高く、切削時に出る切り粉が刃物に溶着しやすいことから、加工精度が出しにくい特徴があります。ステンレスは耐熱性に非常に優れており、錆びにくさや耐水性などの高さも相まって火や水を使う場所に多く取り入れられています。また、汚れに強く衛生的にも安心な素材であることから、キッチンや浴槽、食器から車両に至るまで、幅広い分野で必要とされています。
チタン
チタンも切削加工が非常に難しい難削材。熱電度率が低く、工具との親和性が高いため、切削加工時に発生する切り粉が原因でビビりが発生したり、工具と化学反応を起こしたりする可能性があります。さらに、切削や研磨で発生する切り粉には発火性があるため、清掃や管理には気を配る必要があります。チタンは軽くて熱に強く、引張強度も高い性質を持っています。また、耐食性にも優れ、海水に触れる環境でも使用できる数少ない金属です。調理器具やアクセサリー、自動車のエンジンやゴルフのクラブなど日常的にもさまざまなものに活用されているチタン。宮崎オーシャンドームや東京湾横断道路の橋脚など、大型の建築物にも活用されています。
インコネル
ニッケルを主体とし、クロムや鉄、炭素などを含有したインコネル。高温強度が大きく熱伝導率が低いこともあり、切削加工が最も困難な材料とも言われています。工具との親和性も高いほか、ステンレスやチタンほど多くのものに活用されていないため切削データが少なく、加工時に切削条件を探りながら進めて行く必要があります。インコネルは高温での強度や耐酸化性、耐クリープ性が非常に高く、高温でも変形や酸化せずに強度を確保できる素材です。原子力発電所の廃液処理装置やごみ焼却炉、水処理施設、さらにはジェットエンジンやスポーツカーの部品などにも使用されています。
マグネシウム
マグネシウムは着火すると激しく燃える性質を持っています。さらに、過熱状態で水に触れると可燃性ガスなどを発生させる金属。高温での加工や火、水のある場所での加工は厳禁で、換気と切り粉の清掃にも注意が必要な素材です。扱いにくいだけなら手を出さない方が良いのですが、実用金属の中で最も軽いというメリットを持ち、剛性や強度も鉄やアルミニウムより優れているほか、加工自体はしやすい特徴を持っています。一般的にはアルミニウムや亜鉛などを加えた合金として扱われ、自動車の部品やノートパソコン、携帯電話、一眼レフカメラの筐体、杖、車いすなどの福祉用品などに使用されています。
その他の難削材
上記以外にもさまざまな難削材があります。加工の現場では型枠などに用いられる超硬合金もそのひとつ。一般的な金属よりも硬いためドリルの刃が通りにくく加工がしにくい金属です。身近なところではガラスも難削材のひとつ。硬脆性があり、加工時に割れたり壊れたりしてしまう可能性があることから、加工には向いていない素材のひとつです。金属は種類が豊富で、加工に対してデリケートなものも多くあります。同時にモノづくりでは高機能・高品質のものが求められます。硬い素材は加工できれば強度の高い製品になりますし、熱に強い素材は耐火性能の高い金属として、キッチンや自動車のエンジンなど高温になる場所でも変わらず高い性能を発揮できます。そのため、難削材を加工できれば製品に付加価値をつけることができ、ユーザーの求められる製品を提供することが可能になります。
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