A5083とは?
A5083は、アルミ(Al)とマグネシウム(Mg)との合金で、アルミニウム5000系に分類されるアルミ合金です。5000番系アルミ合金において最も強度に優れており、耐食性と溶接性も良好です。アルミニウム5000系は主にアルミニウムにマグネシウムが添加されたアルミ合金で、アルミ合金の中で比較的切削性が高いです。歪も出にくく、精度も出しやすいため、加工性に非常に優れています。また、溶接性にも優れています。その分、高い形状精度が求められることが多いことも特徴の1つです。アルマイト処理をはじめとした表面処理も容易に行うことができ、全体のバランスが非常に優れているのでアルミ合金の中で最も市場に流通しています。
5000番系(A5052、A5056、 A5083)
5000番系の材質はマグネシウムを添加した材質で、耐食性と強度、溶接性が高い材質です。A5052はアルミ合金全体の中で中程度の強度を持ち、合金板材の一般的な材質です。A5056は丸棒の一般的な材質で、耐食性や切削性に優れています。A5083は非熱処理合金の中では最高の強度を誇り溶接性に優れております。
特徴
・強度はA5052より高く、非熱処理合金中最強。 |
・切削加工性も5052より優れる。 |
・耐海水性・低温特性に優れる。 |
・溶接構造に適している。 |
A5083はアルミニウム5000系の中では4.0~4.9%と、マグネシウムを多く含んでいます。耐食性が高く、船舶関係で採用されることが多いです。
記号 | シリコン(Si) | 鉄(Fe) | 銅(Cu) | マンガン(Mn) | マグネシウム(Mg) | クロム(Cr) | 亜鉛(Zn) |
A5058 | ≦0.40 | ≦0.40 | ≦0.10 | 0.40-1.0 | 4.0-4.9 | 0.05-0.25 | ≦0.25 |
引張強さ(N/mm2) | 耐力(N/mm2) | |
A5083P-H112 | 275以上 | 120以上 |
A5052P-H112 | 175以上 | 65以上 |
A5052との比較
A5083は、強度はA5052より高く、非熱処理合金中最強です。
- 歪みにくく溶接性がよい
- 硬くて、粘り気は低い
- プレートの平面精度がよくない
- A5052は切削工具の選定に注意する必要がある。
メリット
- 耐食性が良い
アルミ合金は表層に酸化皮膜を形成しているため、耐食性に優れています。また後述のアルマイト処理によって耐食性をさらに向上させることが可能です。 - A5052よりも強度が高い
A5052よりもSi,Mnを多く含有しており、強度に優れています。 - 溶接性が良好
A5083はジェラルミンなどと異なり、溶接性が良好です。
デメリット
- 表面が傷つきやすい
鉄系材料と比べて表面が傷つきやすいため、製品などに採用する場合はアルマイト処理をオススメします。
加工性について
A5083は加工性が非常に高い材質です。A5083はA5052と比較すると、材料の価格は高いですが、加工性がよいので、加工条件によってはコストダウンにつながる場合もございます。プレートの平面精度がよくないので、板厚そのままで使用する際は精度に注意するか、もしくはプレートの削り出しを行う必要があります。
加工方法
切削加工
A5083は熱伝導性もよく被切削性も非常に優れているので、SS400などの鉄よりも切削加工がしやすいです。また、高速切削も可能なため作業時間も短縮できます。
溶接
A5083はA5052よりもさらに溶接性が高いので、溶接に向いています。
用途
・化学装置:LNGガスタンク類/空気・ガス分離装置化学タンク |
・包製容器:プロパン用ボンベ |
・船舶・車輌:構造用/LNGタンカー/マスト |
・土木関連:橋梁/ガードレール/高欄 |
・精密機器:真空ポンプ/半導体製造装置 |
・機械部品:溶接を必要とする部品 |
表面処理
アルマイト | アルマイトとは人工的に酸化被膜を生成する処理で、耐食性や強度をあげるために用いられます。値段も安価で、A5083には多く採用されているのでオススメの処理です。 また、黒アルマイトやカラーアルマイトによって、色を付けることも可能です。 |
めっき | A5083に施す処理として一般的なのは前述のアルマイトですが、無電解ニッケルメッキなども可能です。均一な膜厚を施しつつ、500HV程度の硬度を得ることができます。 |
ヘリサート | ヘリサートとは、ステンレスでできたコイル状の部品であり、アルミやMCナイロンなど軟質材のタップ穴に挿入して使用します。A5083の場合メネジの耐久性が弱いため、相手部品が鉄やSUSの場合はネジ山が負けてしまう恐れがあります。そのため、ステンレスでできたヘリサートを使うことによって、ネジ山が潰れることを防ぐことができます。 |
塗装 | 通常の焼き付け塗装は問題なく、密着性もよいです。ただ、アルミの光沢を最大限に活かしたい場合は先述のカラーアルマイト処理をオススメします。 |
主なアルミ合金材料の種類
純アルミ系 | A1050 | 純度99.50%以上 | 純アルミ系 柔らかい、伝導率が高い。熱伝導性、加工性、表面処理性、耐食性などアルミの特性を活かせる材質。熱交換器、化学工業タンク、電気機器などに使われる。 | ||
A1100 | 純度99.0以上 | ||||
Al+Cu系 | A2014 | ジュラルミン | 強度・高度が高い。銅を添加しているため酸化しやすく、耐食性が低い。 | ||
A2017 | |||||
A2024 | 超ジュラルミン | ||||
Al+Mg系 | A5052 | よく使われる | 耐食性と強度、溶接性が高い材質。船舶や車両、通信機器部品などに利用される。 | ||
A5056 | 丸材によく使われる | ||||
A5083 | 強度が高い | ||||
Al+Mg+Si系 | A6061 | 板材メイン | 耐食性が高い。A6063は押出加工性に優れ、建築用サッシを中心とした形材によく使われる。 | ||
A6063 | 押出材メイン | ||||
Al+Zn+Mg系 | A7075 | 超々ジュラルミン | アルミニウム合金の中で最も強度がある合金。A7204 は鉄道車両やバンパー補強材に利用される。 | ||
A7204(A7N01) | 溶接性に優れる |