タフピッチ銅と脱酸銅と無酸素銅の違いとは?
タフピッチ銅(C1100)
タフピッチ銅とは、純度が99.90%以上の純銅で、0.02~0.05%程度の酸素を含有させております。純銅の中では無酸素銅ほどの純度はありませんが、展延性や絞り加工性、耐食性、耐侯性に優れております、反面、600℃以上の高熱で加熱すると、水素が材料内部に残っている酸素と反応し、銅内部で水蒸気を作り出すことで水素脆化を起こす可能性があります。導電性の特性を活かして、通信機器、ブスバー、自動車用部品などに利用されています。
りん脱酸銅(C1201・C1220)
りん脱酸銅とは、純度が99.96%程度の純銅で、0.015 〜 0.04%程度のりんを含有させております。加工性や絞り加工性、展延性、溶接性、耐食性、耐候性、熱伝導性に優れていますが、りんが含有しているため、タフピッチ銅と無酸素銅に比べて導電性が低いです。加熱しても水素と反応して内側から水蒸気が生成されないので無酸素銅と同様に水素脆化を招かない特性を活かして、ガスケット、湯沸かし器などに利用されています。
無酸素銅(C1011・C1020)
無酸素銅とは、純度が99.96%以上の純銅で、その中で最も酸素の含有量が低いです。酸素をほとんど含まない純銅で。酸素量が0.001%から0.005%とごく微量です。導電性、熱伝導性、加工性が非常に優れていますが、反面強度が劣ります。また、タフピッチ銅とは違い、水素脆化を招かない特性を活かしてC1020は電子・電気機器、ブスバー、熱交換器などに利用されています。電気管用については99.99%以上の純度を持つ材料もあります。
タフピッチ銅とりん脱酸銅と無酸素銅の違いとは?
タフピッチ銅(C1100)の特徴は、導電性が高く、加工性に優れていることです。ただし、高温環境下で水素脆化を起こすという欠点があります。そのため、高温状態となるケースの場合、導電材料には無酸素銅、非導電材料にはりん脱酸銅を選択すると良いです。りん脱酸銅(C1201・C1220)の特徴は加工性、熱伝導性が優れていることです。タフピッチ銅と比較すると導電率は劣りますが、水素脆性を起こしません。無酸素銅(C1011・C1020)の特徴は導電性、加工性、熱伝導性が優れていることです。ただし、タフピッチ銅、りん脱酸銅と比較すると強度が劣ります。
特性
銅は金属の中でも熱伝導性・電導性・加工性・展延性に優れており、様々な業種・業界で使用されております。特に、銅の電気抵抗は導電率を表す国際基準となっております。
純銅 | タフピッチ銅 | りん脱酸銅 | 無酸素銅 |
酸素含有率 | 0.02〜0.05%程度 | 0.01%程度 | 0.002%程度 |
導電性 | 〇 | △ | 〇 |
加工性 | 〇 | 〇 | 〇 |
熱伝導性 | 〇 | 〇 | 〇 |
強度 | 〇 | 〇 | △ |
水素脆化 | × | 〇 | 〇 |
化学成分
種類 | Cu | P |
無酸素銅(C1020)(OFCu) |
99.96Min | – |
タフピッチ銅(C1100)(TCu) |
99.9Min | – |
りん脱酸銅(C1220)(DCu) |
99.9Min | 0.03 |
上記の通り、無酸素銅が最も純度が高く、真空溶解によって製造されています。そのため、酸素の量をごく微量に抑えており水素脆化を起こしにくい純銅です。タフピッチ銅は多少の酸素を含有するため、600℃以上の環境では水素脆化を起こす可能性があり、高温での使用には注意が必要です。最も流通しており一般的に一番入手し易い材質です。りん脱酸銅は、タフピッチ銅と比べて導電率は劣りますがリンを脱酸材として添加し、酸素が除去されているため高温でも水素と反応せず水蒸気が発生しません。タフピッチ銅と比べるとやや導電率が悪い材質です。
銅の特徴
- 銅は金属の中で銀に次いで高い導電性を有していることから多くの電気・電子部品に使用されています。高温で使用する場合は無酸素銅を使用する。
- 非常に高い熱伝導性を持ち、各種の熱交換器に使用される。
- 継続して使用することで「緑青」という美しい風合いに変化する。
- 展延性に優れ絞り加工や曲げ加工に適している。
用途
無酸素銅(C1020)
電気・電子部品、化学工業部品、熱交換器、音響用部品
特に導電性が必要な部品、高温になる部品に使用されます。
タフピッチ銅(C1100)
電気・電子部品、建築材料、器物、機械部品、自動車用部品、ガスケット
最も汎用性があり、導電材として使用されます。
燐脱酸銅(C1220)
湯沸器、ガスケット、冷蔵庫用部品、建築材料
建築材料や高い導電性が必要でない場合に多く使用されています。
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