チタン加工の難しさ
チタンは強度、耐熱、耐食などにおいて優れた性質を持っていますが、ステンレスと同様、鋼などの他の金属と比較して加工時の工具寿命が短いと言われる金属です。
強度が高く切削や溶接が難しい
チタンは強度が高いため切削抵抗が高く、切削温度が工具に伝わる割合が高いことが難しい原因とされます。溶接の際はチタンの溶接部分が大気に触れると反応し、脆化現象が起きやすくなります。
熱伝導率が小さく熱がこもって工具が摩耗しやすい
チタンは熱伝導率が小さいため、切削時に発生した熱が工具に蓄積し刃先などの局所の温度が集中的に上昇します。そのため工具との摩擦が大きくなり劣化の原因になります。
活性化しやすく工具に焼き付きやすい
チタンは化学活性化しやすいため、刃先が高温になると工具とチタン材との熱化学反応が進行し著しく工具磨耗を起こしやすくなります。
ヤング率が低く、加工時にたわみやすい
ヤング率すなわち縦弾性係数が鋼のおよそ2分の1と小さいため、切削中にチタン材が変形しやすくなります。とりわけ板状の厚みがない加工では加工精度の低下やビビリが発生します。
チタン加工の注意点
切削速度を落とす
工具磨耗を抑えるためには、切削温度を低く保つ必要があり、そのためできるだけ切削速度を低く設定します。
切削油を使用する
切削温度と切削抵抗を低く抑えるため、適切な切削油を使用します。高速度の切削では水溶性切削油剤を使い、量を多く圧力を高くして冷却効果が高まります。低速度では、工具先端の磨耗低減や焼きつき防止のため不水溶性切削油剤を使用します。
チタンに適した工具・工作機器を使用する
超硬合金工具が使用されますが、磨耗を抑えるためチタンカーバイドは含まない種類が望ましいです。通常切削では耐摩耗性に優れた超硬合金K10、機器系での断続加工なら耐欠損性に優れた超硬合金K20などが適しています。
代表的なチタン加工の種類
加工の種類 | 特徴と対策 |
切断加工 | – レーザー加工:熱による切断、形状対応広い
– シャーリング:切断速度速い、大量加工向き – ワイヤーカット:高精度、大量加工に適する |
曲げ加工 | – プレス加工:圧力や角度の調整が重要
– ベンダー曲げ:材料の習性と寸法に合わせた調整が必要 |
溶接加工 | – ティグ溶接(TIG):シールドガスで脆化を防止 |
切削加工 | – マシニングセンタ:自動工具交換、高精度加工
– フライス盤:複雑な加工が可能、多品種生産向き<br>- ドリル加工:ステップフィードやオイルホール付きドリルを使用 |
意匠性を高める加工 | – 研磨加工:ブラスト、ヘアライン、鏡面仕上げ
– 意匠加工:大気酸化法、陽極酸化法、化学酸化法 |
まとめ
難削材は加工時に特別な工具や設備が必要とされ、高度な技術や知識が求められることが多いです。