クロム銅の特性と加工性
クロム銅の特性と加工性
クロム銅(Cr-Cu)は、銅にクロム(Cr)を添加した合金で、耐摩耗性や強度を高めつつ、銅の高い導電性や熱伝導性を維持した素材です。クロム銅は電気機器や機械部品、溶接電極などに広く使用されています。その特性と加工性について詳しく解説します。
1. クロム銅の特性
基本的な物理特性
- 高い導電性
銅本来の高い導電性を持ちながら、添加されたクロムにより強度が向上しています。- 電気伝導率:50~70% IACS(純銅は約100% IACS)
- 高い熱伝導性
熱伝導率も高く、熱を効率よく伝えることが可能です。
機械的特性
- 優れた耐摩耗性
クロムの添加により、硬さと耐摩耗性が強化されています。- 硬度:100~150 HB程度(熱処理により更に向上)
- 高い耐力と引張強度
クロムによる硬化効果で、機械的強度が大幅に向上。- 引張強度:約400~500 MPa
- 耐熱性
高温環境でも形状が安定しており、耐熱性に優れています。
耐腐食性
- クロムの添加により、純銅よりも腐食に対する耐性が改善されています。
溶接適性
- 溶接に適した特性を持ち、特にスポット溶接やシーム溶接の電極として使用されることが多いです。
2. クロム銅の加工性
切削加工性
- 良好な切削性
純銅よりも硬度が高いため、切削加工性がやや良好ですが、工具選定や加工条件の最適化が重要です。- 工具摩耗が進みやすいため、コーティング工具(TiNやTiAlNなど)の使用が推奨されます。
- 切削油を適切に使用することで熱発生を抑え、加工精度を向上させることが可能です。
成形加工性
- 塑性加工性
銅よりも硬いため、冷間加工性はやや劣りますが、熱間加工での成形が容易です。
溶接性
- クロム銅は溶接電極として使用されることが多い一方で、材料自体の溶接は困難な場合があります。
- 高い熱伝導性により、溶接中に熱が拡散しやすく、溶接部の温度上昇が抑えられるため、適切な溶接条件が必要です。
熱処理特性
- クロム銅は析出硬化型の合金であり、熱処理により強度と硬度を調整できます。
- 溶体化処理(Solution Treatment):材料を高温で均一化し、冷却して基礎的な特性を整える。
- 時効処理(Aging Treatment):クロムの析出により硬さと強度を向上。
3. クロム銅の用途
クロム銅の特性を活かし、以下のような分野で使用されています:
- 電気接点・電極
スポット溶接やシーム溶接の電極材として使用される。 - 抵抗器部品
電流の通過による発熱や摩耗に強いため、抵抗器の部品に適している。 - 高温環境の部品
高い耐熱性と機械的強度を活かし、高温環境下で使用される部品に採用される。 - 航空宇宙や自動車産業
高い信頼性と耐久性が求められる部品に適用される。
4. クロム銅加工の注意点
- 工具選定 高硬度材料用の工具を使用し、工具摩耗を抑える。
- 切削条件 低速で高送りの条件を試しながら、切削油を使用して工具寿命を延ばす。
- 熱処理後の変形 熱処理工程では材料の変形が発生する場合があるため、加工後の調整を考慮する。
- 加工前の素材選定 合金比率によって特性が変化するため、用途に応じて適切な素材を選ぶ。
まとめ
クロム銅は、銅の高い導電性・熱伝導性を維持しながら、クロム添加による耐摩耗性、強度、耐熱性を兼ね備えた合金です。加工性は純銅より劣るものの、適切な工具や条件を選べば切削・成形加工が可能です。その特性を活かし、多様な産業で利用されています。
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