絞り加工における金型設計の難しさ
絞り加工(ディープドローイング)は、平板の金属をプレスして深い形状に成形する加工法ですが、金型設計にはいくつかの難しさがあります。主な課題は以下のとおりです。
1. 板厚減少と破断の防止
- 絞り加工では材料が大きく変形するため、適切なクリアランスやR形状を設計しないと、板厚が極端に減少し、破断する可能性があります。
- 特に深絞りでは、パンチとダイの間の摩擦や材料の流れを考慮する必要があります。
2. しわの発生防止
- フランジ部に適切な圧力をかけないと、材料が過剰に流れてしわが発生します。
- これを防ぐためにブランクホルダー(しわ押さえ)の圧力調整が重要です。
3. 材料の選定と潤滑
- 絞り性の良い材料(例えば低炭素鋼やアルミ)を選ぶ必要があります。
- また、適切な潤滑剤を使用しないと、摩擦熱や焼き付きが発生し、製品の品質が低下します。
4. スプリングバック(弾性戻り)の管理
- 絞り加工後に材料が元の形状に若干戻るため、寸法精度を確保するための補正設計が必要です。
5. 加工回数の最適化(段取りの設計)
- 1回の絞りで目的の形状に成形できない場合、複数回の絞り工程を設計する必要があります(多段絞り)。
- 各ステップで適切な中間形状を設定しないと、材料の破断やしわの発生リスクが高まります。
6. 金型摩耗と寿命
- 繰り返し加工するため、金型の摩耗が避けられません。特に高張力鋼(ハイテン材)を使用する場合は、金型の耐摩耗性を考慮した材料選定が重要です。
- 表面処理(PVDコーティングなど)や超硬合金の使用も有効です。
7. CAEシミュレーションとの連携
- 近年では、CAE解析を活用して事前に成形シミュレーションを行い、問題を予測・対策することが増えています。
- ただし、実際の加工条件と完全には一致しないこともあるため、試作と調整が依然として重要です。
絞り加工の金型設計は、材料の流動性、潤滑、加工条件など多くの要素を考慮する必要があり、高度な知識と経験が求められます。どのような形状の絞り加工を考えていますか?
絞り加工の用途
絞り加工(ディープドローイング)は、金属板を深く成形できるため、さまざまな産業で使用されています。主な用途を以下にまとめます。
1. 自動車部品
- エンジン部品(オイルフィルターケース、エンジンマウント、燃料タンク)
- 排気系部品(マフラー、触媒コンバーターケース)
- ボディパーツ(ホイールハウス、フレーム部品)
- 内装部品(カップホルダー、ドアハンドル)
2. 家電・電子機器
- 洗濯機や冷蔵庫の内部部品(モーターハウジング、圧縮機カバー)
- スマートフォン・PC(スピーカーケース、バッテリーケース)
- 照明器具(ランプシェード、LED反射板)
3. 食品・飲料関連
- 缶製品(アルミ缶、スチール缶)
- ステンレス製の調理器具(鍋、ボウル、フライパン)
- 真空フラスコ・水筒の外装
4. 医療機器
- 手術器具(ステンレス製の器具ケース、カテーテル部品)
- 薬品容器(特殊な金属製カプセル、医療用ガスボンベ)
5. 航空・宇宙産業
- 燃料タンク(高圧タンク、航空機の油圧システム部品)
- エンジンカバー(タービンハウジング、シールド部品)
6. 建築・インフラ
- 水回り設備(シンク、排水管部品)
- ガスメーター・給湯器カバー
7. 精密機器・産業機械
- モーター・ポンプのハウジング
- 高圧容器(ガスボンベ、油圧シリンダー)
絞り加工は、軽量で強度が求められる部品に適しており、特に「一体成形によるシームレスな構造」が必要な用途で活用されています。どのような用途を想定されていますか?
絞り加工の製作事例
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
弊社で順送型、トランスファー型、単発型を用いて試作、量産加工をすることが可能です。金型設計からご協力させていただきます。海外で金型製作をしてコストメリットを出すことができます。材料は鉄、ステンレス、真鍮、チタンなど様々対応させていただきます。
TECH-JOURNEYによる発注のメリット
見積りや工場差配、製造委託先との契約交渉などの工数を削減!
金属作りたい製品の3Dデータをお送りいただいたら納期や価格などお客様のご要望に合う最適な工場を弊社が手配・調整し、見積りを回答いたします。工場とのやりとりはすべて弊社が対応します