真鍮は、銅と亜鉛の合金で、別名「黄銅」とも呼ばれる材料です。私たちが生活のなかで用いている5円玉も、真鍮を材料としています。銅と同じく加工性に優れており、世の中で使われている銅の大半は、純銅と真鍮であるとも言われています。
真鍮とは
真鍮とは、別名「黄銅」とも呼ばれる銅と亜鉛の合金のことで、亜鉛が20%以上のものを指します。真鍮の英語表記は「Brass」で、音楽のブラスバンドで使われるトランペットなどの楽器は、真鍮で作られています。
真鍮は、亜鉛の添加量により特性が大きく変わるため、材料によっては「七三黄銅」や「六四黄銅」といったように、銅と亜鉛の比率を示した名称が使われているものもあります。真鍮は、主に伸ばしたり圧縮したりする加工である、伸銅品として使われることが多い材料です。代表的なものとして、金管楽器以外にも5円硬貨や水洗トイレの給水管、金属模型などが挙げられます。また、見た目が黄金色で美しく、酸化するとアンティークな雰囲気を漂わせることから、アクセサリーに使われることも多くあります。
真鍮の特徴
真鍮のメリット
真鍮のメリットは、優れた加工性と耐食性、電気伝導性・比較的高い強度・価格が安価な点です。
加工においては、熱間鍛造性・展延性・転造性・切削加工性に優れており、めっきやはんだ付けがしやすい特徴もあります。高い電気伝導性があるので、端子コネクターのような電気製品の部品として使われることも多くあります。
また、真鍮は空気中で徐々に表面が酸化し黒ずんでいくものの、酸化皮膜となって内部を保護するため、全体が腐食するのを防止します。
真鍮のデメリット
真鍮は、応力腐食割れの一種とされる「置割れ」が発生する場合があります。置割れは、機械加工などを施した真鍮が、日時の経過により、大気中の水分や二酸化炭素などが結晶粒界に腐食を引き起こし、粒界腐食を起こす現象を指します。置割れを回避するには、めっきや塗装を施したり、焼きなましで内部応力を除去するのが有効です。
また、ラテックスなどのゴム類に接触すると、ゴムが分解腐食してしまうデメリットもあります。
真鍮の種類
黄銅(C2600)
C2600は、七三黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が70:30の黄銅です。銅の割合が高く、絞り加工性に優れています。
C2600の主な用途は、端子コネクター・配線器具・カメラ部品などです。
●C2600の化学成分(単位:%)
合金番号 | Cu | Pb | Fe | Zn |
C2600 | 68.5~71.5 | 0.05以下 | 0.05以下 | 残部 a) |
a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。
黄銅(C2680)
C2680は、銅と亜鉛の比率が65:35の黄銅です。C2600と同様に絞り加工性がよく、深絞り用として採用されています。C2680の用途は、C2600と同じく、端子コネクターや配線器具、カメラ部品などが挙げられます。
●C2680の化学成分(単位:%)
合金番号 | Cu | Pb | Fe | Zn |
C2680 | 64.0~68.0 | 0.05以下 | 0.05以下 | 残部 a) |
a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。
黄銅(C2801)
C2801は、六四黄銅とも呼ばれる材料で、銅と亜鉛の比率が60:40の黄銅を指します。冷間加工性に劣るものの、熱間加工性や強度に優れており、展延性も良好です。C2801の主な用途は、衛生管・機械部品・配線器具などが挙げられます。
●C2801の化学成分(単位:%)
合金番号 | Cu | Pb | Fe | Zn |
C2801 | 59.0~62.0 | 0.10以下 | 0.07以下 | 残部 a) |
a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはCu又はZn以外の分析しない元素が含まれる。
ネーバル黄銅(C4641)
C4641は、黄銅に少量の錫を添加した材料です。C4600台の黄銅を「ネーバル黄銅(海軍黄銅)」とも呼びます。C4641は耐食性(特に耐海水性)がよく、船舶用部品やシャフトなどに用いられます。錫により硬度と強度を向上させていますが、一方で伸びは減少しています。
●C4641の化学成分(単位:%)
合金番号 | Cu | Pb | Fe | Sn | Zn |
C4641 | 59.0~62.0 | 0.50以下 | 0.20以下 | 0.50~1.00 | 残部 a) |
a):表中で成分値を規定する元素以外を残部とし、残部は分析しない。なお、残部にはZn以外の分析しない元素が含まれる。
加工事例
マシニング加工・旋盤加工
プレス・深絞り加工
真鍮の精密プレス加工
精密プレス加工とは?
精密プレス加工とは、プレス加工の中でもより精密な加工方法を指します。通常のプレス加工よりも難易度の高い製品を作るのが大きな特徴で、加工に使う金型も、より高精度なものが必要になります。真鍮は薄く伸ばしてシート状に加工しやすい材料のため、プレス加工に向いている材料の1つです。
プレス加工との違い
プレス加工と精密プレス加工は、実は基本の加工方法は同じです。プレス加工とは金型と金型を組み合わせて金属を打ち抜くような加工方法で、型抜きクッキーや穴あけパンチのようなイメージとなります。金型には鋼材などを使うのが一般的です。
精密プレス加工で使われている金型は、SKD・タングステン・グラファイト・セラミック・モリブデン・クロムなどさまざまな特殊材料を使っているのが特徴です。プレス加工よりも精度の高い金型を作るため、時間をかけて設計してから多くの材料を用いて製造しています。
真鍮の絞り加工
絞り加工とは2つの金型でシート状の材料を挟み、凹凸のある形に仕上げる加工方法です。円柱や円錐、角筒などの形状を作るのに適しています。真鍮の絞り加工では、真鍮を薄いシート状に伸ばしてから金型で成形します。展延性に優れている真鍮は絞り加工にも向いており、加工性の高さからさまざまな部品に用いられているのが特徴です。表面加工もしやすく、コネクタ部品や釣具など多くの製品に活用されています。真鍮の絞り加工をする際は表面加工が重要なポイントとなり、加工をしなければ酸化して黒ずんだり錆びたりするので注意が必要です。
岐阜精器工業
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