タンタルとは
情報通信機器や液晶テレビ、さらには自動車の部品などに使用され、私たちの生活に欠かせない存在となっているレアメタルのタンタル。タンタルとは、原子番号73の第6周期に属する第5族元素であり、元素記号をTaで表される遷移金属です。1802年にアンデシュ・グスタフ・エーケベリによって発見されました。タンタルという名前は、ギリシャ神話のタンタロスに由来しています。融点が高く、耐火性に優れた金属であるタンタルはレアメタルの一種としても知られており、合金の成分の一部としても用いられています。タンタルは、良好な加工性、高強度、耐久性、延性、高耐食性、熱伝導性、および高融点等の優れた特性を持ち、これ等の特性を必要とする、化学工業、薬品製造、航空宇宙、エネルギー機器、軍需用等の様々な用途の合金に利用されております。
タンタルの特性・性質
タンタルは密度や延性が高く、非常に硬い物質ではあるものの加工がしやすく、熱や電気の伝導度も高い性質を持っています。銀白色を呈し光沢があり、酸による腐食にも高い腐食耐性があります。タンタルの融点は摂氏3,017度(沸点は摂氏5,458度)と高く、これを上回る元素はタングステン、レニウム、オスミウム、炭素だけとされています。
一般特性 | |
化学式 | Ta |
分類 | 遷移金属 |
原子量 | 180.94788 |
物理特性 | |
密度 | 16.654(293 K、固体)g/cm3 |
融点での液体密度 | 15.000(融点、液体)g/cm3 |
融点 | 3258K, 2985°C |
沸点 | 5783K, 5510°C |
タンタルの用途
タンタルの用途は、電気・電子機器のほか、その耐食性からも航空宇宙機器や医療機器、軍事、エネルギー分野で広く用いられます。
- コンデンサ
タンタルは蓄電性能が高く、タンタルを使用した「タンタルコンデンサ」をはじめ、コンデンサ用のワイヤーや粉末として用いられます。 - 半導体
回路基板にタンタルを用いることで、半導体に使用される銅が拡散するのを防ぐバリア層を形成します。 - エンジンタービンブレード
融点・耐食性が高いタンタルの特性から、航空機におけるエンジンのタービンブレードに用いられる超合金として利用されます。 - 積層造形(3Dプリンタ)
タンタルは高耐食性・高強度・高純度であることから、宇宙・航空分野や自動車をはじめ、医療、工業機器の部品を3Dプリンタで製造する際にも活用されています。 - 化学分野
タンタルの高い耐食性・耐熱性により、製薬・医療品などの化学分野における容器や配管などに利用されます。
タンタルの活用
タンタルは耐食性以外に、チタン等と共に、高い生体とのコンパティビリティーが有る為、人口歯根や人工骨の素材として応用されております。また、半導体やディスプレイデバイスの材料としてだけでなく、半導体製造装置や、ディスプレイ製造装置に、多用されております。これら電子デバイスの製造装置は、装置素材からのコンタミネーションを避ける必要が有り、又装置内に投入される物質に対して耐食性が無ければなりません。その為、高真空でも、揮発しにくい(蒸気圧の低い)素材が必要で、タンタルは、半導体・電子部品製造装置の構造部材、ヒーター、容器、蒸着材ボート等に利用されております。タンタルは、ジルコニウム等と同様に、ゲッター材(気体を吸収する性質)が有り、真空中の不純物ガスを吸収し脆化する性質が有ります。高温では、酸素と反応し、水素、窒素を吸収して脆化しますので注意が必要です。これらの吸蔵不純物ガスは、真空中で焼鈍する事によって取り除く事が出来ます。水素は800°C、窒素は1700°Cで除去されます。電子機器用タンタル電解コンデンサー(タンタル微細粉とタンタル線を使用)は、スマホやPC、EV車、ロボット等に、その堅牢性故多く使用されております。これは五酸化タンタルを誘電体とするコンデンサーです。安価な電子機器であれば、アルミ電解コンデンサーで代用できますが、より信頼性の高い電子機器には必須のデバイスです。
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